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コンセンサス・ビルディング基礎知識コーナー
その2:交渉学って何? (メルマガ 第14号より)

合意形成を考える上で、何か確固とした理論的な根拠はあるのでしょうか? トーマス・クーンが科学的パラダイムと呼んだ、研究者の誰もが口に出さ ずとも想定する理論的フレームワークというのは、合意形成の分野でも存 在しえるのでしょうか。

交渉学(Negotiation)は合意形成分野における科学的パラダイムの一候 補者と言えます。交渉学は、世の中に存在するありとあらゆる交渉ごとに ついて研究する学問で、米国の大学院ではロー・スクール、MBAプログラム、 都市計画学科などさまざまな分野でカリキュラムとして取り上げられてい るだけでなく、ビジネス界、行政関係者の間でも広く知られている学問です。

今回は、交渉学の中でも基礎的な理論である、「立場と利害」についてご 紹介します。

■立場(Position)と利害(Interest)

交渉学で最も影響力のある著作「Getting to Yes(邦題:ハーバード流 交渉術)」でロジャー・フィッシャーが世に広めた考え方で、立場と利害 を明確に区分し、利害に着目することが交渉による合意形成を促進する上 できわめて重要ということです。例えばあなたがお腹が空いていたとして、 「パンが欲しい」と言ったらこれがあなたの立場です。立場に至った理由 である「お腹が空いた」があなたの利害です。立場を主張しあう交渉では なかなか合意に至りません。例えば蕎麦屋にパンが欲しいと主張しても、 うちは蕎麦屋だ帰ってくれという立場が返ってくるだけです。そこでもし 利害に着目し、腹が減ったんだ、と言えば、じゃあ蕎麦を出してやろうか という交渉が始まるわけです。立場とは自分で勝手に出した結論であって、 親でもない交渉相手にとっては立場の背後にある理由など簡単に理解でき るものではありません。利害に関する理解の共有こそが合意形成の鍵なの です。実際、第三次中東戦争では利害に着目した調停でカーター元米国大 統領が戦争を終結させています(そしてノーベル平和賞につながりました)。

他にも交渉学の分野にはあなた自身の日常生活から国際紛争までさまざま なレベルの合意形成につながるアイディアが詰まっています。今回の国際 セミナーでもサスカインド教授に交渉学についてレクチャーしていただき ますが、まずは下記文献をご一読されてはいかがでしょうか。

Fisher, Ury, and Patton "Getting to Yes"
邦訳:「ハーバード流交渉術」フィッシャー&ユーリー
//文庫版がお手軽です:三笠書房 知的生きかた文庫//

〔文責:PI-Forum理事 松浦正浩〕

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