メールマガジン 第13号
(2003/2/26)
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□ 目次
【トピック】[イベント情報(ご案内)]
●コンセンサス・ビルディング国際トレーニングセミナーのご案内
【トピック】★☆コンセンサス・ビルディング基礎知識コーナー☆★
●「コンセンサス・ビルディング」って何?
[イベント情報(報告)]
●平成14年度土木学会四国支部 調査委員会
第3回 土木技術者のための
合意形成技術の教育方法に関する研究会のご報告
(土木技術者のための合意形成技術の教育方法に関する研究会
開催支援事業担当:石川雄章/水谷香織)
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★米国のコンセンサス・ビルディングの権威によるワークショップ型
セミナーです!
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「コンセンサス・ビルディング国際トレーニングセミナー」
開催のお知らせ
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この度、私どもPI-Forumでは、MIT(マサチューセッツ工
科大学)のサスカインド教授による「合意形成の交渉学に関するトレ
ーニングセミナー」を、「3月27日(木)昼−28日(夕)の1日半」、
都内で開催することとなりました。
サスカインド教授は、「コンセンサス・ビルディング」の理論・実践
指導の世界的権威でありますが、PI-Forumでは、NPO認証申
請中の昨年1月にも、来日中の先生をお招きし、講座型のセミナーを
開催した経緯がございます。その基礎的な成果を踏まえ、今回はトレ
ーニングワークショップをプログラムした本格的なセミナーを開催す
る次第です。
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1.セミナー名称
「コンセンサス・ビルディング 国際トレーニングセミナー」
- コンセンサス・ビルディングの理論と実践を学ぶ2日間 -
Theory and Practice of Consensus Building
2.主催・協力
主催:NPO法人 PI-Forum
コンセンサス・ビルディング国際トレーニングセミナー実行委員会
協力:(決定団体のみ記載)
構想日本、メールマガジン週刊まちづくり編集部
3.実施概要
◇セミナー開催日時;
3月27日(木) 13:00〜17:30
3月28日(金) 9:30〜16:30
(逐次通訳方式)
◇会場;
ハナシンホール
<東京都豊島区西池袋5-17-14(池袋駅徒歩8分)>
TEL 03-3988-8740
◇参加費
一般:15,000円、学生:8,000円
PI-Forum会員(一般):8,000円、(学生):5,000円
<領収書が必要な方は、事前・当日に発行いたします>
#参加と同時に会員となった方は、会員料金を適用いたしますので、
下記の通りとなります。(2004年4月末までの会費となります)
◆会員申込みされる一般の方;21,000円
(内訳;入会金3,000円+会員年会費10,000円+参加費8,000円)
◆会員申込みされる学生の方;8,000円
(内訳; 入会金3,000円+会員年会費2,000円+参加費5,000円)
4.セミナー内容
1)招聘講師
ローレンス・E・サスカインド教授
http://www.lawrencesusskind.com/
マサチューセッツ工科大学都市計画学科教授
ハーバード-MIT公共紛争プログラム代表
合意形成研究所代表
2)セミナー・プログラム
今回のセミナーは、1日半をかけて、民主的な政策形成手続の
ありかた、市民参加のプログラムづくり、話し合いの運営、対立
的な状況のマネジメント・・・といった合意形成にかかわる私た
ちが必要とする知識とスキルを、米国の第一人者から手ほどきを
受けることができる貴重な機会です。
セミナーでは、一方的な講義ではなく、事例等にもとづき議論を
深めるワークショップ、話し合いの運営を実体験してみるシミュ
レーションなど、インタラクティブで飽きることのない内容にす
るよう、現在企画調整中です。
●正式な申込み受付方法は、次号メルマガ(来週発行予定)でご案内
の予定です。
●「コンセンサス・ビルディング国際トレーニングセミナー」
実行委員会のメールアドレスを特設いたしました。
seminar-info@pi-forum.jp
(本セミナーに関するお問い合わせ等は、こちらへお願いします)
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★セミナーに向けて、基礎知識の連載がスタート!
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★☆コンセンサス・ビルディング基礎知識コーナー☆★
−コンセンサス・ビルディング国際トレーニングセミナー
ご参加にむけての事前講座−
その1:コンセンサス・ビルディングって何?
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今回、このカタカタ言葉をはじめて耳にされた方も多いと思います。
私もどう訳せばよいものか、これまで悩んできましたが、今回はその
ままカタカナで訳すことにしました。Consensus Buildingを日本語に
すれば、「合意形成」となるのでしょうが、これでは意味が広すぎるの
で今回はカタカナにします。
コンセンサス・ビルディングは合意形成を実現するためのプロセス、
方法論です。具体的には、招集、責任の明確化、審議、決定、合意事
項の実現の5段階から成っており、段階ごとにさらに細かな手続が決
められています。現場では、この流れを基本にしつつ、議論のテーマ
や参加者に応じて適切なプロセスが設計されます。また、このプロセ
スを設計、管理、そして議論を運営するためにメディエーター(また
はファシリテーター)と呼ばれる人が関与します。
米国では、労使紛争で用いられてきたメディエーション(調停)の手
法を環境問題、公共政策課題に適用する動きが1970年代に始まり
ました。1974年にワシントン州スノクアルミー・ダム建設に関す
る行政、住民、環境団体を巻き込んだ大紛争が、メディエーションに
より合意に至ったことから、この分野は次第に発展してきました。こ
の点については昨年のPI-Forumのセミナーにおいてサスカインド教授
にお話いただきました。なお、今回の講師であるサスカインド教授は、
まだ米国でも試行錯誤の段階であった1970年代からメディエータ
ーとして活躍し、その経験をもとにコンセンサス・ビルディングを体
系的に整理した方です。
コンセンサス・ビルディングの基本的な目標は、利害(interest)を持
つ人たちを特定し、議論に呼びよせ、フェイス・トゥ・フェイスで話
し合わせ、彼ら自身で全員一致の合意(コンセンサス)を見つけ出さ
せることです。つまり、市民の意見を「集める/反映する」のではな
く、市民に意見を「話し合わせる」という点が特徴であるといえます。
コンセンサス・ビルディングの背景には「交渉学(negotiation)」とい
う理論があります。セミナーでは交渉学についても紹介していただき
ますが、その予習として、次回本メルマガにて交渉学について簡単に
説明したいと思います。
〔文責:PI-Forum理事 松浦正浩〕
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★四国での研究会のご報告です!
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土木学会四国支部主催、PI-Forum協力
第3回
土木技術者のための合意形成技術の教育方法に関する研究会
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■◇体験活動にみるコミュニティプログラムと
体系的人材育成の展開◇■
2002年12月5日(木) 14:00−17:00
於:徳島大学工学部工業会館2F大会議室
NPO法人国際自然大学校代表 佐藤 初雄氏
NPO法人国際自然大学校・代表の佐藤初雄氏は,昭和58年から山梨県
群馬県等において自然の中での体験型学習活動を展開されています.
現在では,(株)ノッツ代表取締役,日本アウトドアネットワーク・
事務局長,(社)日本環境教育フォーラム理事,日本野外教育学会
理事,自然体験活動推進協議会副代表理事も兼任されています.
本研究会では,「野外学習・環境教育分野」から,体験活動を介した
コミュニティ構築プログラムの知見や体系的な人材育成プログラムに
関する話題を提供していただきます.
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1.アイスブレイクからはじまる
本日のキーワードは,「アイスブレイク」,「合意形成」,「人材育成」
の3つである.まずは,体を動かす「アイスブレイク」を体験しながら,
これらのキーワードに触れる.「何も要りませんよ,ジャケットを脱い
で楽にして下さい!」との佐藤氏の一言が場を和らげていた.
●アイスブレイク
その1「(フルーツバスケット風)席取り・自己紹介ゲーム」
会場の後ろ半分の空きスペースを利用し,参加者は全員立ったまま輪
になった.「後の講演で主体的に参加して頂けるかどうかは,このアイ
スブレイクにかかっていますので,学習の中ではこの時間を一番大切に
しています(笑)」と佐藤氏.
まず,佐藤氏が全員の輪の中央に立ち「今日初めてきた人は?」と質
問をする.該当する数人が手を挙げる.つぎに,中央にいる佐藤氏と手
を挙げた人は今いる場所から他の手を挙げている誰かの場所に移動し
なければならない.しかし,もともと輪の中央に一人いるので,輪から
一人あぶれることになる.あぶれた人が今度は中央に立ち「○○の人
は?」と続けていく.いわゆる席取りゲームのようなものである.
質問は他に,「今日お昼にうどんを食べた人は?」,「股引をはいてい
る人は?」,「阪神ファンの人は?」,「日本酒がお好きな人は?」,
「阿波踊りの好きな人は?」,「既に忘年会を3回済ました人は?」な
ど.時折笑いが巻き起こり,和やかな雰囲気が形成されていった.
●アイスブレイク
その2「ボール投げ・名前覚えゲーム」
輪になったまま,一人が名前を呼びながらその人にボールを投げる.
ボールを受けとった人は,ボールを投げた人の名前を読んで,「○○さ
ん,ありがとうございます」とお辞儀をする.これを繰り返しながら,
皆の名前を覚えていく.やってみると,ボールがよく来る人来ない人,
声の大きい人小さい人,人の名前を忘れて何度も聞き返す人,結構個性
が出るようである.つぎに,ボールの数を増やし,テンポをあげること
でゲーム性が増していき,いつの間にか皆が真剣になっていた.
●アイスブレイク
その3「ボール渡しゲーム」
参加者全員(16名)がA,Bの2つのチームに分かれて円になる.
ボールが1チームに1つずつ渡され,そのボールをチームのメンバーの
中で順に廻していく.ただし,両隣の人に渡すことはできない.全員に
廻し終えたら最後にボールを受け取った人は最初の人にボールを戻す.
戻ったチームは「戻った!」と言ってしゃがむ.先にボールを戻したチ
ームが勝ちというもの.
ゲームの開始前に,チームで早くボールを渡す方法を相談する.1回
戦は,各チームとも円を小さくして渡す時間を短縮した.結果はAチー
ムの勝ち.「今のは幼稚園レベルです(笑)」と場を盛り上げる佐藤氏.
2回戦は時間をかけて相談を行う.全員の両手を最初の人が一番上に,
次の人がその下に,最後の人が一番下になるように垂直方向に並べ,ボ
ールを下へ落とすことで次の人へ渡す方法を成功させたAチームが勝っ
た.それでも,「もっと良い方法を探して下さい.」と言う佐藤氏.3回
戦は再び相談,Aチームは一人の腕に皆の指を並べ,上からボールを転
がす方法を成功させ,全員で「戻った!」.またしてもAチームが勝っ
た.
●アイスブレイクを通じて学ぶ「合意形成」
ボール渡しのゲームの途中では,方法を相談する時間が3回あった.
この相談のやりとりに関して参加した人の満足度を4段階でたずねた.
満足した人は指を4本,不満だった人は指を1本立てる.その中間は3
本,2本という具合である.立った指の本数が各チームの得点である.
次の4つの質問に4段階で回答し,皆の前でその番号を一斉に指で示す
ようにする.
質問1:発言したいことを思いっきり発言できたか?
たとえば,その回答として,一番満足度が高いことを示す"4"を出
したA氏は「とても楽しかったため」と言う,一方同じチームでも一番
満足度が低いことを示す"1"を出したB氏は「自分が発言する前に全
部決まってしまった」と言う.
質問2:人が話していることを聞くことができたか?
質問3:自分の感情を出すことができたか?
質問4:ボールの渡し方法に対して納得できたか?
質問1〜3までは,Aチームの得点が高かった.が,質問4の回答で
は,勝ったAチームの得点が低いことが分かった.つまり,Aチームは
勝負には勝ったが納得はしていない,Bチームは負けたが参加者は納得
しているということである.
一般的に,かかわり方が十分であったり,それが上手く機能していた
りすると良い結果もでてくる.点数が低いときは,次にどうするかが課
題となる.些細なゲームの中でも,グループの中で話し合いをする機会
がもてると,そういった課題が見えてくる.
「合意形成は,ごく日常的な出来ごとであり,その際大切なことは,
声をだすこと,名前を覚えること,上着を脱ぐことなのではないだろう
か」と佐藤氏は言う.
●アイスブレイクの効用
このようなアイスブレイクを社員研修として利用する企業もある.身
体を使うことで気が抜けて,笑いがでる.大の大人もみんな夢中になる
中で,アイデアがふっと出たりする.
また,研究会や会議などでは,アイスブレイクとして,1時間,3時
間,最低でも30分くらいの時間を割いて,コミュニケーションを促進
させてから本題にはいることが望ましい.ややもすると,知識を伝えす
ぎたり,情報を伝えすぎたりするため,「まず,体験ありき」という姿
勢が大切.「まぁ,やってみましょうよ」というように気軽にはじめる
と,気づきを得やすくなる.
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2.体験活動から学ぶ
●合意形成プロセスにおけるMITのバランス
本日体験したようなゲームを通じた人間関係のトレーニングの中で
は,「コンテント」と「プロセス」が重要視されている.「コンテント」
はゲームにおいて実行した結果であり,「プロセス」は発言したいこと
が発言できたか,聞きたいことが聞けたかという過程である.結果とし
てボールを早くまわせたという「コンテント」はゲーム全体の中では氷
山の一角であり,むしろ大切なのは様々なことが起こっている「プロセ
ス」であるといえる.
とくにグループ活動や合意形成を行う上では,「プロセス」の「MIT
バランス」を考えることが大切である.MITとは,以下のような「メン
テナンス(M)」,「インディビジュアル(I)」,「タスク(T)」
である.
・メンテナンス(M)・・・「あなたはどう思う?」と聞いたり,「そろ
そろ時間だよ」と言ったりするグループの維持を図る機能.
・インディビジュアル(I)・・・個人的な欲求や感情.これに従いす
ぎてしまったり,抑え込んでしまったりすると合意形成が上手くい
かないということにもなりかねる.
・タスク(T)・・・課題を達成するためのアイデアを出す機能.固定
した人ではなく,グループの中で誰かがアイデアを出す,という雰
囲気が渦巻いていると良い.様々なアイデアがあればあるほどグルー
プの目的の達成は早い.
このようなMITのバランスがとれず,誰かの独裁になってしまうと,
メンテナンス機能を担う人がいなくなり,「飲みに行こう!」というこ
とにもならなくなる.また,グループとしての達成感もわかないだろう.
●マニュアル化が難しい人材育成
野外教育では,そこにかかわった人の今の気持ちや,グループがどう
機能しているかを良く観ることを大切にしている.例えば,そこに来て
いるけれど,グループの中に積極的に関与していないという人もいる.
また,最初は個々人が後ろに引いて議論をしていたグループが,だんだ
ん乗ってくると頭が寄ってきて声が大きくなる.このような,表情や身
体的な動きなどの非言語を読み取ることができるファシリテーターの
ような能力を持った人材の育成が重要である.
人材育成のマニュアル化において,「知識が大切である」ということ
は言える.しかし,目の前の現場で何が起こっているのか,ということ
を的確に把握し対処できるようになるためには,経験者とそれを学ぼう
としている二人が一組になって,「私はこう思う,あなたは?」と言葉
や以心伝心のような形で確認しあうという経験が必要である.とくに,
その能力は場数を踏んで育てていかなければならない.また観る視点は
ある意味主観的であるため,マニュアルに記載することができない.
このようなことから,人材育成は非常に難しいといえる.とくに,自
然の中では,雨や雪が降るかもしれないし,雷がなるかもしれない.不
確定要素が多く不安定な中で,その場の条件を見て判断していく能力が
必要とされる.例えば,5歳くらいの子供だと,大人の予測をはるかに
超える天真爛漫な動きをする.そういう状況の中で全体をコントロール
する能力が求められる.
●「野外教育指導者養成プログラム」の誕生
近年,体系的な野外教育の指導者養成が必要とされてきた.1990年中
ごろに文部科学省の研究費により研究会が発足し,1年間で指導者要項
をまとめた.合計では3泊4日に及ぶ野外教育研修を,5年間全国各地
で行った.
2000年には,文部科学省,環境省自然保護局,国土交通省の河川局,
港湾局,農水省などが中心となり,コーン(CONE:Council for Outdoor
and Nature Experiences)という名称の自然体験活動推進協議会(全国
200団体)を発足した.港湾局では港の活性化,環境省では環境基本計
画の具体策,自然体験活動のプロ・アマ養成のカリキュラム作成が課題
である.農水省では,現在農村の活性化をテーマとしている.とくに,
来年度からは都市と農村との教育に焦点をあて,自然体験を単なるゲー
ムではなく,地元の人とどうかかわるか,関係をどう定着させるか,ま
でを視野にいれている.実際には,現時点でも都市と農村の関係が出来
てきている.例えば山梨では,子供たちを受け入れるキャンプ場を通じ,
地域の人とともに循環型の社会を目指す活動へと動き始めた.
いかに良いフィールド,道具,プログラムがあっても,それを進める
のは人である.人の話を聞く耳を持ち,「自分の思っていることが言え
ましたか?」とタイミング良く適当な聞き方ができる指導者の育成が一
番の要である.
●「DO->LOOK->THINK->GROW->次の体験」という循環学習へ
大人も子供も頭でっかちになりがちで知識はあるが実行できない,と
いう傾向が,とくに企業の若い人たちに多くみられる.しかし,野外で
は体を動かしながら行うので単純明快.先ほどのゲームのようなものを
一つのメタファ(比喩)にして,そこで学んだものを日常の生活で生か
すということを考える.心と身体を揺さぶって,リラックスした状態で
初めて気づきを得る.これを経験教育という.
以下のような体験学習法のガイドラインを作成した.
DO(体験)/体験する(プログラムを体験する)
->LOOK(見つめる)/体験を見つめる(何が起きたか良く見てみる.
データ集め)
->THINK(分析する)/何が起きたのか考える(メンバーと分かち
合い,その場から学ぶ)
->GROW(分かる)/概念化する(学びを一般化,社会化して次につ
なげる)
->次の体験へ(試みる/結び付ける)
最初に体験し,気づきを通して学ぶことが大切である.
ある小中学校では,体験学習として,そば打ちをしてそれで終わって
いた.しかし,これは体験するだけになっており,その後に何が起きて
いるか,どのような体験であったかを見つめることが必要.先ほどのゲ
ームでも,参加者自身が話し合いに対する満足度として2を出した人に,
4になるためにはどうしたらよいのかを聞いてみると,具体的な問題解
決方法が見えてくるだろう.このように学習しながら成長していく循環
学習が大切である.
また,場の雰囲気はスパイラルを描くように上昇するばかりではなく,
ときには下がる.グループがドーンと落ち込んで皆のモチベーションが
下がったり,グループがパニックになったりする段階もある.そういう
ときは,もう一度振り出しに戻ることになるが,気づきや発見を大事に
することが必要である.
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3.国際自然大学校における野外教育指導者養成研修の紹介
(配布資料より一部抜粋)
●国際自然大学校とは
国際自然大学校では,自然や人とのかかわりの中で人生を前向きに生
き続ける人(アウトフィッター)を育てることを目的とし,自然の中で
の体験活動を通して,子供から大人まで,よりよい人間形成のための教
育活動を開発し,とくに自然の中で育むこと,挑むことを中心に各種事
業が実施されている.
主催事業には,子供のための事業(子供自然塾,田植えキャンプ,夏・
冬・春休みのシーズンキャンプなど),大人のための事業(リフレッシ
ュコース,アウトフィッターコースなど),指導者養成のための事業(キ
ャンプカウンセラー,野外教育のプロ養成のための研修システムなど)
がある.また,受託事業には,子供のための事業,企業のための事業,
学校のための事業,野外教育事業(講師・指導者派遣)がある.
●野外教育指導者とは
野外教育事業には,参加者に最も近い場面にいる狭義の意味の指導者
=「直接的指導者」と,その事業を生み出すために働く広義の意味の指
導者=「間接的指導者」がいる.
直接的指導者は,事業の当日,参加者を前に直接プログラムの「進行
役」を務める.また,それ以前の仕事として,プログラムの組み立てる
(脚本を書く)作業も行う【プログラムデザイン】.
間接的指導者は,その事業を作り出す(プロデュースする)作業を行
う.「いつ,どこで,誰が,誰を対象に,何の,何のために,どのよう
に,いくらで」実施するかを企画し運営する.
野外教育を普及して行くためには,「企画・運営」が出来る広義の指
導者が必要とされている.
●指導者養成研修カリキュラムとは
指導者養成研修カリキュラムは,以下の3段階の野外指導そのものの
研修と,特別専科コースとして運営のための4分野の研修,合計7つの
研修からなっている.
□野外指導研修:
(1)第1段階:アクティビティデザインレベルの研修
【野外教育,体験学習法,指導者】
アクティビティとは,いわば「部品」のこと.アクティビティが適切
な位置に配置されてプログラムという「製品」が組み立てられる.野外
教育の実現のためには,まずこのアクティビティ自体をデザインするこ
とが重要となる.例えば,カヌー,登山,ソロ活動,雪上キャンプ,等
の野外プログラムを効果的に運営するために,そのパーツとしてのアク
ティビティを組み立てる必要がある.「登山」を例にとってみると,地
図読み,コンパスワークから始まり食料計画,装備計画,実施計画,記
録計画,評価等のアクティビティを準備する必要がある.同時にこのプ
ログラム全体のねらいが明確に主催者と参加者の間でしっかりと確認
されてはじめて,これらのアクティビティが実際の登山を行った際に効
果的に機能するのである.
(2)第2段階:プログラムデザインレベルの研修
【企画,プロデュース,プログラムデザイン】
プログラムを構成する(デザインする)能力を養うプログラムがある.
事業全体の目的(ねらい)を実現するために,どんなアクティビティが
必要であり,アクティビティとアクティビティを繋いでいくかを考える
ことが重要となる.野外教育の指導者研修が単発のアクティビティの羅
列にならないよう,全体の目的や参加者の要求に合わせ,それぞれ関連
付けながらデザインする必要がある.そのためには,プログラムを組み
立ててゆく際のコンセプト(基本的な方針)が必要となる.何を表現し,
実現したいのかをきちんと考えておかなければならない.プログラムデ
ザインで重要なことは,以下のようなことだ.
・プログラムの「ねらい」の把握
・どのような参加者か 年齢,性別,職業,参加動機等
・実施場面における臨機応変の対応
・実施場所のフィールドの把握
・スタッフのキャスティングと相互理解
・多くの要素を詰め込みすぎないこと
(3)第3段階:マネジメントレベルの研修
【マネジメント,広報,評価,安全管理】
「企画」から「実施」に移る段階の中では,マネジメント能力が最も
重要になってくるであろう.アクティビティやプログラムデザインをす
るだけでなく,野外教育事業にかかわるスタッフや予算,広報・渉外な
どのプロデュースなどと守備範囲もかなり広く,それぞれの専門的な知
識も必要となる.
特別専科コース:
(4)リスクマネジメント研修
【フィールドにおける安全,法律,保険,マニュアル】
野外教育を行う場合に,ありとあらゆる点を視野に入れながら,リス
クに対して策を講じることがリスクマネジメントである.野外教育のね
らいの一つに「自分の身は自分で守る」ための知識と能力を身につける
ことがある.しかし,このねらいを達成しつつ,一方で主催者,指導者
の安全管理の視点も重要となる.リスクへの対策は,任意団体であれボ
ランティア団体であれ,ましてや専門的に行っている団体であれば,当
然のこととして行われていなければならない.そこで,実際のフィール
ドにおける安全管理や安全に関する法律や保険といった幅広い知識が
必要となる.
(5)ファシリテーション研修
【ファシリテーション,グループプロセス,場をつくる・読む】
「ファシリテーション」とは,人々が集まる「学びの場」が効果的に
展開するように「促進」「介在」することをいう.「ファシリテーター」
とはそうした作業を進め,役割を果たして行く人をさす.ある教育的目
的をもった学びの場において,その目的達成のために,参加者(学習者)
が,あるいは参加者同士がよりよく学ぶ(学びあう)ための「関係性作
り」が何よりもファシリテーターの役割といわれている.この研修のね
らいは以下の3点である.
・自分に気づく・・・ファシリテーションを行う上での自分の能力や
資質に気づく
・視点を養う・・・グループプロセス(参加者の間で起きていること)
を観る視点や能力を養う
・技術を学ぶ・・・場づくりのための技術や,グループの促進や介入
の技術を学ぶ
(6)広報(パブリックリレーションズ)研修
【広報,デザイン,メディア】
事業を実施する際,幅広く不特定多数の人々に知ってもらうために,
広報がある.しかし,その伝え方によっては,大きな誤解をしたまま事
業に参加し,取り返しの使い無いようなことがおきてしまうことがある.
そうした誤解を少なくすることを学ぶとともにに,効果的な参加者募集
に役立つような,魅力あるデザイン表現や様々な発信の手法について学
ぶことが大切である.
(7)事業評価研修【自己事業評価,PDCAサイクル】
成果を確認し,より高い効果をあげるための努力は,どんな事業にも
不可欠である.評価とは,改善という行動を導くための判断材料であり,
だからこそ自分のために自分自身で習慣として評価を行うことが大切
なのだ.数値化しにくい個人の「学び」をねらいとする野外教育には,
評価はなじみにくいといわれることも少なくないが,だからこそ,プロ
グラムの評価をどのように行なうかといった手順,ポイントをしること
が必要になる.
●研修方法 〜体験学習法とは〜
一人ひとりの人間成長を願う野外教育の場面では,知識を伝達して記
憶する,いわゆる概念学習の形式より,学習者が主体的に体験を通じて
学ぶ,体験学習の方法が多く用いられている.野外教育の指導者の大切
な役割の一つは,学習者が他の学習者とのかかわりを通してともに成長
する手助けをすることであり,そのためにはそうしたかかわりの場で何
が起こっているかが適切に読み取れること,と同時に効果的なかかわり
あいの場をいかに創るかを充分に心得ておく必要がある.そのためにも,
野外教育指導者養成研修は以下に示すよう体験学習法を用いて指導す
る.
(1)定義
参加者の学習要求に応じてデザインされ,その体験をベース(素材)
にした学習活動の総称である.人は経験することによって様々な学びが
可能であるが,とくに「今,ここ」に共有されているデータにもとづい
て,自己,他者,それらのかかわり方,その場の「気づき」を通して学
習(成長,変革)する教育方法である.
(2)特徴
・学習目標(ねらい)を常に明確化し,共有化する過程を大切にする.
・学習者の主体性の尊重.知識伝授型ではなく学習者主体型.(もちろ
ん,教育者・主催者・スタッフの学ぶところも大きい)
・学習の循環過程(経験する->見つめる->分析する->概念化する->
次の体験へ・・・)を重視する.
・援助的関係(教える者<->学ぶ者,学ぶ者<->学ぶ者)のプロセス
を深めることを大切にする.
・コンテント(内容)よりは,プロセス(その場に起こっていること,
ことに対人関係の過程)に焦点をあてた上で,内容と過程の統合を
めざす.
・人間の尊重
また,個人の成長に焦点を置く場合と,リーダーシップまたはグルー
プ成長に重点を置く場合があり,これらはトレーニングのねらいに則し
てデザインされる.
主要な構成要素は,集中的小グループ,実習(構成された経験,気づ
き,理解を得られている様な設定,屋内・野外),小講義(そこでの経
験に語りかけ,体験の仮説化を助けようとするもの),記入用紙(ふり
かえり用紙,チェックリストなど)である.
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4.質疑応答
●アイスブレイクについて
アイスブレイクには,人数やスペースなどの制限はあまりない.多数
の人を対象とする場合は,隣の人や近隣の人とペアを組んで行うものを
実施すればよい.個人的には,2,000人を対象としたアイスブレイクが
最大である.役所関係の方と住民の方が参加する会議等でも雰囲気を和
ませるために利用できる.
また,当然ゲームに溶け込めない人もいる.このような場合は,少々
様子を見て,やらなくてもいい権利を与える.ただ,ときどき「やりた
くなった?」という声がけもする.あくまでも参加者が主体的にかかわ
ることを前提とし,Challenge by Choiceの精神を大切にしている.
アイスブレイクに利用されるゲーム集は市販されている.
●ファシリテーターについて
ファシリテーターが,参加者の意見を集約し,ある種の方向性を持た
せることに固執してしまうと,「すべって」しまう.具体的には,最後
に活動を振り返る部分で,参加者がその日に学んだと思ったこと以上の
ことをファシリテーターが述べてしまったり,無理に落としどころをみ
つけようとしてしまったりすることがある.研修が長期にわたる場合は
修正も可能だが,1時間半などの短時間では難しい.実際には「すべっ
た」ときでも「大すべり」をしないことが大切であり,参加者の皆さん
の顔をみて常に確認しながら言葉や方法を取捨選択をしている.ときに
は流れを思い切って変えることなどが必要となるが,これにはやはり経
験とトレーニングが必要である.
●参考文献について
参考となる図書がいくつかあるので詳しくは後日紹介する.例えば,
「人間関係トレーニング―私を育てる教育への人間学的アプローチ―」
(南山短期大学人間関係科/監修,津村俊充・山口真人/編,ナカニシ
ヤ出版)は,人間関係トレーニングが体系的整理され内容的にも非常に
素晴らしい.また,先ほど紹介した研修の内容については,「野外教育
指導者研修ガイドライン」(文部科学省委嘱事業 青少年野外教育指導
者研修事業平成13年9月 青少年野外教育指導者研修事業研究会)に
出ているので参考にされたい.
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5.主催者所見
徳島大学 山中英生
前回に続いて今回も,学習者の主体性を尊重し.知識伝授型ではなく
学習者主体型での教育方法をどのように作り上げるべきかという,教育
プログラムの開発においてきわめて重要なテーマでの研究会となった.
学習者が主体的に体験を通じて学ぶ,体験学習の方法の導入が重要な鍵
であるとの指摘には同感した.以下の3つの「気づき」をあげておきた
い.
第一に,重要な視点は,「体験学習」でいう『体験』とは、単に何か
を経験したことでなく、体験をどう認識して、次の行動に生かすかが問
われているということであったと言える.アイスブレークでも,振り返
りと感想の共有という時間を加えることで,全く違った意味をもつこと
は大きな感動であった.体験は終りではなくて、体験したことを振り返
り,その感想を集めて、体験の意味を共有すること、参加者は得られた
体験とその認識を基礎にして、次なる課題にとるべき行動や言動を考え
て、実行することを学ぶ。その中で教育の支援者は,こうした体験と行
動変化の背後にある参加者の学びの流れをつかむ力.教育の成果を把握
する力,それをもとに課題を構成する力が要求される.
第二は,合意形成技術という得たいの知れない課題についての「体験」
のありかたである.たとえば,いきなり事業説明会の現場や,紛争状態
のある事業地に学生を送り込むという教育スタイルも生まれつつある.
ただし,多くの場合,そこで生じている真の課題をつかめないまま,「恐
ろしさ」や「熱意の深さ」のみを体験としてしまう.アイスブレークの
技術は,直接的に「体験」させることは重要ではなく,「課題」となる
状況を体験させ,しかも振り返りを共有することで,何が生じていたの
かを観察・洞察する技術を身につける方法として有効であると感じた.
あるいは,合意形成のシミュレーションにおいても,ゲーム性を取り入
れて「楽しみ」ながら学ぶというしかけは是非とも必要であろう.
第三は,今回の「教育方法の開発」が目指している「スキル」もしく
は「人物像」の見極めをすることがまだまだ不足していることである.
交渉力,場作り力,人間関係を維持する力,コミュニケーション力,会
議進行能力などが研究会の成果としてキーワード化されてきているが,
これらを整理して成果目標として言語化しておくことが研究会の重要な
課題である.
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■■事務局Voice (事務局 水谷香織)■■
しばらくワークショップ等の開催を控えていましたが、それは設立
初年度の最大のイベント!コンセンサス・ビルディングの権威を招
いてのワークショップ型セミナーの準備のため、でした。
事前予習のための基礎連載も含め、実行委員会一同、気合いが
入ってます。
とはいえ、昨年開催したワークショップなどのレポートも鋭意作業
中です。(^_^;)
いろいろ併せて、配信していきます。
なんと、これからは旬刊!以上のペースで3月末までメルマガをお届
けしますので!
ぜひご期待下さい!
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