このページはPI-Forumとして活動していた頃のウェブサイトをアーカイブしたものです。

現在、同法人は democracy design lab. と名称を変更し活動しております。

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NPO法人 『PI−Forum』  ■□■□■□■□■□■□■□■□■□
  メールマガジン 第14号
                         (2003/3/5)
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□ 目次

【トピック】[イベント情報(ご案内)]
●コンセンサス・ビルディング国際トレーニングセミナー参加者募集のご案内


【トピック】コンセンサス・ビルディング基礎知識コーナー(第2回)
●「交渉学」って何?


[イベント情報(報告)]
●PI-Forum主催 異分野PI交流ワークショップ【第I期】第5回(概要版)
「東海村におけるリスクコミュニケーション活動に向けて」
(財)電力中央研究所・経済社会研究所 谷口武俊氏

「原子力における合意形成とPI‐Forumの今後」
コメント:慶応大学大学院政策メディア研究科 鈴木達治郎教授
(事業担当:城山英明、梅本嗣)


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★米国のコンセンサス・ビルディングの権威によるワークショップ型セミナー
 です!
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★「コンセンサス・ビルディング国際トレーニングセミナー」参加者募集を
開始いたします!

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前号でご案内させていただいた、MIT(マサチューセッツ工科大学)のサス
カインド教授による「合意形成の交渉学に関するトレーニングセミナー」につ
いての参加申込み受付を開始します。
サスカインド教授は、「コンセンサス・ビルディング」の理論・実践指導の世
界的権威でありますが、PI-Forumでは、NPO認証申請中の昨年1月にも、来日
中の先生をお招きし、講座型のセミナーを開催した経緯がございます。
その基礎的な成果を踏まえ、今回はトレーニングワークショップをプログラム
した本格的なセミナーを開催する次第です。

http://www.pi-forum.jp/susskind1.html

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参加お申し込み方法・参加費

参加を希望される方は下記の実行委員会のE-mailまで、下記必要事項を、
ご記載の上、お申込み下さい。追って事務局より詳細をご連絡いたします。
(なお、予め一部プログラムしか参加できない場合は、その旨もお知らせ
下さい。)

E-mail: seminar-info@pi-forum.jp


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「コンセンサス・ビルディング国際トレーニングセミナー」参加申込み用紙
〔この部分を切り貼りされ、seminar-info@pi-forum.jp へご送信下さい〕


★上記セミナーに申し込みます。

お申し込み必要事項:

■ご氏名 (           )
■所属  (           )
■連絡先
□住所
[〒   −
                              ]
□電話番号(                        )
□FAX番号(                       )
□電子メールアドレス(                   )

■通信欄
 (                              )

註:お問合せも、このアドレス(→ seminar-info@pi-forum.jp)までお願い
いたします。

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〔以下、前号情報の更新です〕-----------------------------------------

1.セミナー名称
「コンセンサス・ビルディング 国際トレーニングセミナー」
 - コンセンサス・ビルディングの理論と実践を学ぶ2日間 -
 Theory and Practice of Consensus Building

2.主催・協力
主催:NPO法人 PI-Forum
 コンセンサス・ビルディング国際トレーニングセミナー実行委員会
協力:(決定団体のみ記載)
 構想日本、メールマガジン週刊まちづくり編集部

3.実施概要
◇セミナー開催日時;
3月27日(木) 13:00〜17:30
3月28日(金)  9:30〜16:30
 (逐次通訳方式)
◇会場;
ハナシンホール
<東京都豊島区西池袋5-17-14(池袋駅徒歩8分)>
TEL 03-3988-8740

◇参加費(資料費・昨年度サスカインドセミナー資料費を含む)
一般:15 ,000 円、PI−Forum会員:8 ,000 円、
学生: 8 ,000 円、PI−Forum学生会員:5 ,000 円、

当日PI−Forum入会される方も会員割引を適用し、
来年度末(=2004年4月末)までの会員資格が得られます。

参加費は原則、指定の銀行振込でお願いしますが、事前にご希望をいただ
いた方については請求書の発行も行います。
(領収書の事前・事後の郵送、当日お渡しもいたします)

4.セミナー内容
1)招聘講師
ローレンス・E・サスカインド教授
 http://www.lawrencesusskind.com/
マサチューセッツ工科大学都市計画学科教授
ハーバード-MIT公共紛争プログラム代表
合意形成研究所代表
2)セミナー・プログラム
プログラムを作成いたしました(予定:一部変更の可能性あり)。
  3月27日(木)
   12:30 受付開始
   13:00 イントロダクション
   13:45 レクチャー:交渉学とWin-Win 思考
    〜合意形成と紛争処理の基礎知識〜
   14:15 シミュレーション・ゲーム (その1)
   15:15 休憩
   15:30 レクチャー:コンセンサス・ビルディングのプロセス
    〜社会的合意形成の枠組みと実践例〜
   16:45 レポート:わが国の合意形成の事例紹介(視野を広げるために)
    PI-Forum 副理事長 城山英明・(株)博報堂 梅本嗣
   18:00 懇親会(セミナー会場内:予定費用は別途実費)
  3月28日(金)
   9:30 受付開始
   10:00 レクチャー:コンフリクト・アセスメント
    〜議論に参加すべき人々の特定方法〜
   11:00 レクチャー:議論と意思決定
    〜効率的な対話を促進する手段〜
   11:45 休憩
   13:00 シミュレーション・ゲーム (その2)
   16:00 質疑応答・セミナー総括
   16:30 解散
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●「コンセンサス・ビルディング国際トレーニングセミナー」
実行委員会のメールアドレスを特設いたしました。
seminar-info@pi-forum.jp
(本セミナーに関するお問い合わせ等は、こちらへお願いします)


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★セミナーに向けて、基礎知識についての連載第2弾です!
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★☆コンセンサス・ビルディング基礎知識コーナー☆★
 −コンセンサス・ビルディング国際トレーニングセミナー
              ご参加にむけての事前講座−
 その2:交渉学って何?
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合意形成を考える上で、何か確固とした理論的な根拠はあるのでしょうか?
トーマス・クーンが科学的パラダイムと呼んだ、研究者の誰もが口に出さ
ずとも想定する理論的フレームワークというのは、合意形成の分野でも存
在しえるのでしょうか。

交渉学(Negotiation)は合意形成分野における科学的パラダイムの一候
補者と言えます。交渉学は、世の中に存在するありとあらゆる交渉ごとに
ついて研究する学問で、米国の大学院ではロー・スクール、MBAプログラム、
都市計画学科などさまざまな分野でカリキュラムとして取り上げられてい
るだけでなく、ビジネス界、行政関係者の間でも広く知られている学問です。

今回は、交渉学の中でも基礎的な理論である、「立場と利害」についてご
紹介します。

■立場(Position)と利害(Interest)

交渉学で最も影響力のある著作「Getting to Yes(邦題:ハーバード流
交渉術)」でロジャー・フィッシャーが世に広めた考え方で、立場と利害
を明確に区分し、利害に着目することが交渉による合意形成を促進する上
できわめて重要ということです。例えばあなたがお腹が空いていたとして、
「パンが欲しい」と言ったらこれがあなたの立場です。立場に至った理由
である「お腹が空いた」があなたの利害です。立場を主張しあう交渉では
なかなか合意に至りません。例えば蕎麦屋にパンが欲しいと主張しても、
うちは蕎麦屋だ帰ってくれという立場が返ってくるだけです。そこでもし
利害に着目し、腹が減ったんだ、と言えば、じゃあ蕎麦を出してやろうか
という交渉が始まるわけです。立場とは自分で勝手に出した結論であって、
親でもない交渉相手にとっては立場の背後にある理由など簡単に理解でき
るものではありません。利害に関する理解の共有こそが合意形成の鍵なの
です。実際、第三次中東戦争では利害に着目した調停でカーター元米国大
統領が戦争を終結させています(そしてノーベル平和賞につながりました)。

他にも交渉学の分野にはあなた自身の日常生活から国際紛争までさまざま
なレベルの合意形成につながるアイディアが詰まっています。今回の国際
セミナーでもサスカインド教授に交渉学についてレクチャーしていただき
ますが、まずは下記文献をご一読されてはいかがでしょうか。

Fisher, Ury, and Patton "Getting to Yes"
邦訳:「ハーバード流交渉術」フィッシャー&ユーリー
//文庫版がお手軽です:三笠書房 知的生きかた文庫//

〔文責:PI-Forum理事 松浦正浩〕

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★(大変遅くなりましたが)
★ 異分野PI交流ワークショップ【第I期第5回】のご報告です!
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PI-Forum主催 異分野PI交流ワークショップ【第I期】
第5回(概要版)

「東海村におけるリスクコミュニケーション活動に向けて」
(財)電力中央研究所・経済社会研究所 谷口武俊氏

「原子力における合意形成とPI‐Forumの今後」
コメント:慶応大学大学院政策メディア研究科 鈴木達治郎教授

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谷口氏は、原子力におけるリスクコミュニケーションについて東海村で実
際に取り組まれているご経験を踏まえて、リスクコミュニケーションを行
う上での問題点についてお話し下さいました。引き続き、PI-Forumのメン
バーでもある鈴木氏に、海外の事例を参考にして、原子力における合意形
成において重要なポイントをご指摘いただきました。
以下その内容の要約です。

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●「東海村におけるリスクコミュニケーション活動に向けて」
(谷口武俊氏)
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〔JCO臨界事故と東海村住民への対応〕

平成11年9月の臨界事故の後、東海村住民は何を感じどうしているのか、
見えてこない部分について、村役場と協力して調査を行った。平成11年
12月1日から19日まで、住民アンケート調査を行ったほか、新聞に意
見募集の折り込み広告を入れ、約80世帯の訪問調査を行った。調査に際
しては村役場の職員に同行してもらい、谷口氏らが話を聞いた(大学生、
大学院生なども動員した)。それまで、住民調査として被ばく線量等の科
学的な調査はなされていたものの、住民の思いを聴いてくれる人が不在だ
ったこともあり、この個別世帯訪問調査は、住民のいろいろな思いにしっ
かりと耳を傾けることが目的とされており、ひたすら聞くことで住民にも
喜ばれた(3時間話を聞いた例もある)。その他、子供を持つ女性へのグ
ループインタビュー、外国人居住者へのインタビューなどを行った。

聞き取り調査を通じてわかったことは、東海村が原子力依存の社会的背景
を背負っているため、住民が当然持つ原子力の安全性についての認知的な
不協和は、これまで、原子力は怖くないと「思い込む」ことにより、不協
和を解消してきたが、事故によりリスクを目の当たりにしたことによって、
不協和を解消できなくなっている現状であった。そこで、谷口氏は、原子
力のリスクに正面から向き合う形で不協和を解消する必要があり、そのた
めに、リスクコミュニケーションが重要であると感じたという。

調査結果は、平成12年2月に報告書としてまとめられ、村長に提出され
た(東海村住民調査支援グループ『東海村住民調査報告書―東海村の総合
的原子力防災計画・まちづくりの策定に向けて―』2000年2月)。
そして同年5月に、村長の諮問機関として「東海村原子力安全対策懇談会」
が設置され、そのなかで住民とのリスクコミュニケーションの重要性を指
摘、その実施に向けての共通認識が形成され始めた。


〔東海村原子力安全対策懇談会(懇談会)の活動〕

懇談会メンバーは、座長に元茨城新聞副社長(元政治部記者)、学識経験
者4名(茨大理工系および社会科学系教授、東大原子力工学系教授、谷口
氏)、区長3名、公募で選ばれた主婦4名、企業・研究所OB3名で構成
され、事務局は東海村原子力対策課が担った。懇談会は、住民の意見を尊
重したいという村長の意欲により設置されたが、行政にそれを支援できる
組織・能力が欠けていたこと、住民の意識を明らかにした上でそれに対応
することを目的とする場から、事業者が説明する場に変容したこと等によ
り、当初の目的どおりには機能しえなかった。また、村議会の原子力問題
調査特別委員会と懇談会との差異がわからないという、懇談会不要論も登
場した。

とは言うものの、平成12年3月27日にJNC(核燃料サイクル開発機
構)が東海村に再処理施設の運転および使用済燃料受け入れを申し出、東
海村が11月10日運転再開申入れを容認するにいたったプロセスでは、
懇談会が一定の役割を担った。再処理施設の運転、使用済み核燃料の受け
入れは知事の判断で行うことができるが、知事が「東海村の住民の意見を
尊重する」としたため、懇談会で議論を行うこととなった。村長は懇談会
での意見なども踏まえ、容認に際して次のような付帯事項を提示、それを
受けて、次のような改善が行われた。
(1)施設の老朽化、経年劣化と安全性への対応として、定期的に村への
報告と立ち入り調査を認めた。(2)JNC東海事業所内の「安全専門委
員会」に、再処理施設関係者以外のメンバーを入れるとともに、懇談会委
員(住民代表)を外部委員として参加させ(その結果資料なども住民に理
解できる言語が使用されるようになった)、安全専門委員会の審議状況が
定期的に懇談会で報告されるようになった。(3)分かり易い情報の提供
が行われるように、JNCのHP上で、再処理施設およびプルトニウム燃
料センターの運転状況、処理・製造実績、トピックスについて、日報、週
報で公開されるようになった。(4)地域とのリスクコミュニケーション
構築のために、平成13年1月1日に、JNC東海事業所にリスクコミュ
ニケーション研究班が発足した(班員8名)。

〔リスクコミュニケーション活動の停滞と新たな試み〕

しかし、リスクコミュニケーションは、なかなか進展していない。
その原因としては、JNC、東海村役場双方に次のような要因が指摘できる。
第1に、JNCの研究班メンバーはリスクコミュニケーションについてほ
ぼ素人であるため、リスクコミュニケーションの理解に時間がかかり、不
十分であった。住民の非言語的信号を読み取る能力が不足し、また、心理
学や行動科学などの基礎的学習がないために場当たり的であり、フィール
ドでの情報をリスクコミュニケーションに結び付けていくという戦略的思
考がなかった。さらに、JNC組織内で、既存の「地域交流課」や「広報」
と何が違うのかを明確に示すことができず、組織内での評価が低く、組織
の支援も得られなかった。第2に、東海村役場は損害賠償処理や原子力災
害措置特別措置法などへの事後対応に追われ、住民が実感する具体的な施
策を展開できなかった。また、リスクコミュニケーションについて、村は
JNCに要求するのみで自らも行うという意識に欠けていた。

そのような状況の下では、具体的な対話に基づく小さな成功体験を持つこ
とが重要である。谷口氏は、現在、その試みとして、C3研究(コミュニ
ケーション、コミュニティー、コラボレーション)、すなわち、地域社会
との具体的対話と協働のための社会実験を計画しているという。

〔原子力におけるリスクコミュニケーション〕
―ワークショップ参加者との質疑応答から―

ワークショップでは、原子力分野におけるリスクコミュニケーションの特
性、コミュニケーションの第一歩の重要性、懇談会の構成、研究者が現実
に関与する場合の倫理等について活発な議論が行われた。

第1に、原子力分野におけるリスクコミュニケーションは、「リスク自体
に関し、専門家間でも必ずしも共通理解がないのでは」との趣旨の指摘が
行われた。谷口氏によれば、確かにそのような問題はあるが、現在はそれ
以前の「伝える気があるかどうか」という段階であるという。原子力の分
野では早くからリスクコミュニケーションの必要性が言われ続けていたの
にもかかわらず、なかなか取り組まれてこなかった。そして、その背景に
は、リスク把握の困難性だけでなく、機敏に動けないという原子力の産業
構造の特性があった。リスクコミュニケーションを行うとは、住民を含め
た利害関係者の間で、当該リスク問題にかかわる関心事項や情報などを要
求、提供、説明しあい、意見交換を行い、関係者全体が当該問題や行為に
対して理解と信頼のレベルを相互にあげていくことである。したがって、
合意形成が直接の目的ではない。原子力分野では必要性だけを主に述べて
きたことへの反省として、原子力のもつネガティブな面(リスク)につい
ても述べる必要があるとの指摘がなされてきた。そしてこれら併せて伝え
ることがリスクコミュニケーションであると思われてきた感じがする。そ
して、その裏には光と影を伝えれば、原子力に対する理解は高まる、ある
いは困難な状態にある活動が無事成功の方向に向かうのであれば、リスク
コミュニケーションをやってもよいという認識が強く見られてきた(今も
存在している)。しかし、リスクコミュニケーションは直接的に合意形成
を保証するものではない、という上に述べた本来の考え方を示すと、とた
んに動かなくなる。リスクコミュニケーションが信頼醸成に大きく寄与す
ることがなかなか理解できず、目の前に見える成果でしか動けないという
大きな問題がある。合意形成を目指したコンセンサス・ビルディングには
状況に応じて多様な手法がある。しかし、これを成功に導くには、日頃か
らのリスクコミュニケーションを行い相互信頼と一定の情報共有、そして
議論の仕方を習得していれば、ということだと谷口氏は考えている。

第2に、リスクコミュニケーション以前にコミュニケーションの第一歩を
踏み出すことの重要性が議論された。谷口氏によると、原子力におけるリ
スクコミュニケーションについて東海村の問題は、事業者・行政・住民の誰
もが対話や協調への「第一歩」を踏み出さない、発言できない環境にあり、
コミュニケーション自体がなされていなかったことにある(事業者は地元
を向いていない。行政・住民は事業者に何もいえない。)。したがって、
第三者であるファシリテーターが間に入るコミュニケーションしかありえ
ないのが現状だという。そして、「原子力の危険性について話せない」と
いう文化を変えること、原子力の危険性について事業者に聞いたら答えて
くれるという環境づくりが必要だという。これに関連し、「説明する側・
される側双方にコミュニケーションのスキルが欠けている日本の現状」を
指摘し、対話能力や会議のやり方などのスキルを学び、実体験を通じて身
に付けることの重要性を指摘する意見が参加者から出された。

第3に、懇談会の構成に関しては、谷口氏は、メンバー構成が重要であり、
特に、住民を入れること、原子力以外の専門家を加えることが必要だとい
う。なお東海村の特徴として、原子力の仕事に関係している(いた)住民
が多いことから、専門的知識に富んでいる住民が多く、平易な言葉から専
門用語まで幅広い議論を行う必要があったという。また、懇談会に住民代
表として参加した区長(3名)のネットワークは住民全体を網羅できてお
らず、ネットワーク外の住民の意見をどう吸い上げるか、如何に意見を言
ってもらえるようになるかも課題であるとのことだった。

第4に、研究者が現実に関与する場合には単に「研究」というスタンスで
はすまされなくなり、コミットメント、踏み込むことが不可欠となり、倫
理や責任が伴うのではないかという重要な問題提起がなされた。

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■「原子力における合意形成とPI‐Forumの今後」(鈴木達治郎氏)
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現在原子力は、合意形成という課題に直面しているが、達成できていない。
その根本的理由を、鈴木教授は、「政策結論先にありきの合意形成プロセス」
にあるという。

合意形成に向けた新たなアプローチとして、フィンランドのdecision in
principleが紹介された。これは、明確な原則に基づいて決定するという
意味である。原子力に関する意思決定は、事業者が行うものとされており、
その上で、その事業者の決定が社会の公益に適しているのかを確認し合意
するプロセスが設定されている。そこでは「誰の責任で行われている事業
なのか」が明確にされ、事業者に事業の作成と説明責任がある(国が地元
で説明することは無い)。実際の議論は「立地」であるから、自治体が
「NO」を言えばその立地はできない。したがって、事業者はいくつかの
代替案を用意し、優先順位付けをし、なぜその土地がいいのかを説明しな
ければならない。日本のプロセスとは根本的に異なる。

このようなフィンランドの経験も参照すると、原子力における合意形成に
向けて以下の点が重要となるという。
(1)政策自体の変更可能性があること。
(2)プロセスについての合意が形成されていること。
(3)相互理解、相互信頼の達成。
(4)コミュニケーションを確保した上での情報共有。
最後に、PI‐Forumだからこそできる役割としては以下の2つが提案され
た。
1)賛成・反対に二分されない第三者機関(中立)としての役割。
2)メディエーターとしての専門家の育成。

以上のような鈴木教授のコメントに続いて、ローカルなレベルでの立地の
議論と国レベルでのマクロな政策議論との関係をいかにつなげていくべき
か、中立的役割を担いうる専門家の重要性といった点について議論が行わ
れた。特に中立的専門家の確保といった観点からは、専門家のマッピング
を行うことの重要性が指摘された(アメリカでは既にNPOにより、分野
ごとの略歴と発言がわかるような専門家のマッピングが行われているとい
う)。


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■主催者所見
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原子力という分野は「合意形成」の必要性が国レベルにおいても、地域の
立地レベルにおいても最も語られる分野である。しかし、今回の2人のス
ピーカーの最大のメッセージは、早急な結論=「合意形成」を直接目指す
ような試みは成功もしないし、適切ではないというものである。例えば、
リスクコミュニケーションについても、人々は「合意形成」へ寄与すると
いう条件付では賛成するが、直接寄与するものではないというと突如興味
を失うという。そのような中で、第1に重要なのは、谷口氏は基本的なコ
ミュニケーションであるという。住民は「不安」について語ることすら有
形無形の制約の中で阻まれてきた。それらを解きほぐし、ひたすら話を聞
くことを通して、信頼醸成については寄与できるという。第2に重要なの
は、鈴木氏の言う社会的意思決定プロセスの明確化であろう。意思決定プ
ロセスの透明化と責任の明確化により、結論はともかく具体的な行動を社
会がとることが可能になる。では、社会におけるコミュニケーション能力
と透明な意思決定プロセスの構築のためには何が必要なのか。これには、
今回のワークショップでも議論された社会における基礎的コミュニケーシ
ョン能力に関する教育の強化から、中立的な専門家のプールとマッピング
に至るまでにいたる様々なレベルの取り組みが必要とされよう。確かに、
原子力という課題は重たいものであるが、取り組みについては身近なレベ
ルからでも一歩一歩可能なものであるともいえるのである。


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