このページはPI-Forumとして活動していた頃のウェブサイトをアーカイブしたものです。

現在、同法人は democracy design lab. と名称を変更し活動しております。

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  NPO法人 『PI−Forum』
       メールマガジン 第23号
                   (2004/2/23)
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★☆目次☆★

【トピック】
[ごあんない]
 ●平成14年度 「米国コンセンサス・ビルディング事例調査」
  インターネット動画配信について
[イベント情報(報告)]
 ●平成15年度 土木学会四国支部
 「土木技術者のための合意形成技術の教育方法に関する研究会」
 『土木技術者のための合意形成技術』 研修会開催についてのご報告
【理事Voice】
 「一緒に学ばせていただく」というスタンスから
 (PI-Forum理事 松浦正浩〔在米国ボストン〕)
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■「米国コンセンサス・ビルディング事例調査」
 インターネット動画配信について
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PI-Forumでは平成14年度事業として米国における「コンセンサス・
ビルディング」手法に関する情報収集を実施し、その一環として、
専門家、行政担当者、市民団体代表を対象にインタビューを実施し
ました。

その模様を収集したビデオ(日本語字幕つき)をこのたびPI-Forum
のウェブサイトに掲載しましたので是非ご覧ください。

PI-Forum http://www.pi-forum.org/
     http://www.pi-forum.org/cbuilding.html

(配信形式はWindows MediaおよびReal Mediaです)

また、コンセンサス・ビルディングの実践のもようを収録したビデ
オも同時に掲載しています。さらに、平成14年度事業にて収集し
た情報(文献、事例)はPIポータルサイト(http://pi.pi-forum.org/)
に収録されておりますので、こちらもご参照ください。

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■平成15年度 土木学会四国支部
 「土木技術者のための合意形成技術の教育方法に関する研究会」
『土木技術者のための合意形成技術』 研修会開催についてのご報告
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土木学会四国支部研究調査委員会では、PI-Forumのメンバーと協力
して合意形成のための基礎的な社会技術の教育方法を研究していま
す。この研修会は、その成果の一部としてコンサルタント実務者向
けのプログラムの試行として実施されたものです。以下に、研修会
の概要等についてご紹介します。

★「土木技術者のための合意形成技術」研修会に参加して

開催日:2003年12月6日(土)・12月7日(日)
会 場:愛媛大学総合情報センター1階メディアホール
主 催:土木学会四国支部研究調査委員会

◆研修会の概要
「協調的計画における合意形成技術」というテーマの本研修会は、
コンサルタント実務者の参加者が17名で、その他、講師役を含む委
員会メンバーとサポートスタッフらが11名、合わせて28名で行われ
ました。
委員会メンバーによる講義とともに、参加者が協調的計画のプロセ
スを体験的に学べるようグループワークを中心にプログラムが構成
されていて、非常に密度の濃いものでした。
特に演習は「国道978号街路樹問題」、「海鳥ダム建設問題」(*注
参照)の2つの実例に基づいて構成された事例が用いられていて、
それぞれの問題に2つずつのグループが取り組みました。演習は、
ステップ毎の講師を除いた全員が参加するという形式で、丸2日間
にわたって同じ問題に取り組むものです。それぞれのグループでは、
実践さながらの熱のこもったワークが繰り広げられました。
下記が、研修会のプログラムです。

◆プログラム
・研修1日目
(1)趣旨説明
(2)「土木分野における合意形成のプロセスと社会技術」講義
(3)課題説明・グループ分け
(4)アイスブレイク
(5)コンフリクトアセスメント(関与者分析)
(6)問題の共有(問題分析)演習
(7)意見交換会(立食会合)+振り返りWS

・研修2日目
(8)アイスブレイク
(9)問題解決手段の分析(目的分析)演習
(10)問題解決手段の構成(アプローチ作成)
(11)集団による代替案評価
(12)参加のプロセス設計
(13)振り返りWS

◆研修内容の一部紹介
(5)コンフリクトアセスメント(関与者分析)は、演習1「関与
者意向調査」、演習2「Issueマップ作成」という手順で進められ
た。「関与者意向調査」は配布されたシートの役を演じるロールプ
レイ形式で行われた。それぞれのシートには役割、問題事項、話し
合いへの参加意思などが記載されている。ファシリテーター役が順
番にインタビューを行い、それぞれが自らの立場を表明することに
より、参加者相互間でそれらの情報の共有化を図ることができる。
次にその関与者意向調査から出てきた問題を縦に、関与者を横に並
べ、それぞれの関与者が自分の立場で関心を持っている問題の項目
に○をつけ、Issueマップを作成する。つまり、Issueマップづくり
とは関与者とその関心課題の特定を行うことである。このIssueマッ
プにより関与者の関心事が一目瞭然となり、これを用いて誰を招い
てどのような議題について話し合いの場を持つのがよいかを提案す
ることになる。演習では、問題事項の扱いに応じて関与者が追加さ
れたり、削除されたりしたことも興味深い点である。
そして、PCM手法(PI-Forumメールマガジン第19号参照)によっ
て、(6)問題の共有(問題分析)、(9)問題解決手段の分析
(目的分析)、(10)問題解決手段の構成(アプローチ作成)が実
践された。
「海鳥ダム建設問題」の1グループでは、(6)問題の共有(問題
分析)演習で中心問題を設定した後、その直接原因を並べる作業を
している際、全ての直接原因を出し尽くしたかどうかを懸念する声
が参加者から挙がった。これに対し、委員会メンバーから「これら
の直接原因全てを満たせば中心問題が解決できるかどうかを考える
とよい」というアドバイスがなされるという一幕もあった。

両日とも、演習の前後にアイスブレイクと振り返りワークショップ
(以下WS)が採り入れられており、終始和やかな雰囲気で進めら
れた。アイスブレイクについては、「心身ともに緊張をほぐす」、
「参加者間でのコミュニケーションを促す」など、その有用性を再
認識する声が多く挙げられた。また振り返りWSは、各個人の振り
返りを共有化することで更なる気づきをもたらすことから、参加者
にとって非常に有効なものとなったと考えられる。
参加者アンケートからは、対象(今回はコンサルタント実務者)を
絞った研修会の形態や体験型のプログラム構成に高い評価が得られ
たが、その一方で、「時間が足りなかった」、「資料の事前配布が
必要」、「2回に分けて行ってほしい」といった、時間配分や時間
的制約に関する指摘の声も多く寄せられた。また、「2事例を扱っ
たことはいいが、関わっていないテーマに対して共有のための発表
があっても理解しにくい」という意見もあり、今後改良の余地があ
ると思われる。
今回の研修会は、単にPCMなどの手法を学ぶだけに留まらず、参
加者がコンサルタントとして国から依頼を受けたという設定のもと
「話し合いのテーブルにつく必要がある人は誰か」という会議のメン
バー選定から「会合をどう進めるか」といった参加のプロセス設計
に至るまで1つのテーマで演習が行われたことが注目すべき点であ
ると感じた。

*注 演習「国道978号街路樹問題」、「海鳥ダム建設問題」の概要
●「国道978号街路樹問題」
 40年前にA市の国道978号沿いに植えられた街路樹をめぐり、落
ち葉や害虫などの被害から街路樹の植え替えを要望する沿道住民と、
記念的な街路樹の伐採に反対する保全派とが現在対立している。沿
道住民の中には、街路樹のため見通しが悪く沿道の活力に悪影響を
与えている、事故多発の原因になっている、と指摘する住民もいる。
 調査を実施してみると、歩道を通行する市民は街路樹があること
を評価しているが、一方で路面を含めて通行のしにくさには大きな
不満をもっている、との結果が得られた。
 国道を管理する国土交通省は、沿道住民を中心に街路のあり方を
考える勉強会を開催することとし、その参加者と議論する議題の検
討をコンサルタントに依頼した。
●「海鳥ダム建設問題」
 水不足に悩まされているB都市地域は、上流のC町に多目的ダム
(海鳥ダム)を建設し、下流D市からの分水計画を要望した。これ
を受けて、国はダム基本計画を発表した。これに対し、C町はその
経済効果を見込んで計画に賛成したが、D市は分水に反対し、計画
は停止状態となった。そのため、国は緊急の治水目的に絞ったダム
建設案を提示し、流域首長・議会の承認は得ている。
こうした対立の中で、環境保全派の住民グループや流域漁業組合も
加わり、反対運動が活発化した。特にD市では住民投票への署名運
動が起こり、住民の過半数を超える署名が集まったが、一方で市議
会は住民投票条例制定案を否決し、一層反発が強くなった。これに
対し、D市の議会・商工会議所・農協は、賛成派として活発な推進
運動を展開している。
 国は、「肩川流域委員会」を設置し、地域の合意形成を目指すた
め、コンサルタントに流域会議のメンバーの選定、議論の進め方を
策定することを求めた。

◆最後に
 この研修会の全容を詳しくお知りになりたい方は、土木学会四国
支部のHP[http://www.netwave.or.jp/~doboku7/](本研修会の模
様は3月末掲載予定)をご覧ください。

(以上 文責:土木技術者のための合意形成技術の教育方法に関す
る研究会 開催支援事業担当:野田昭子/石川雄章)

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 □三 理事Voice ■三 
  「一緒に学ばせていただく」というスタンスから
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最近、合意形成技術をどうやって「教育」するものか、ということ
を考える機会が多いのですが、何よりも謙虚になることが大事なの
かな、と思い始めています。
現場の案件とは最近あまり係わりがないのですが、昔、現場の仕事
に携っていたころのことを考えてみると、また、いま講師として現
場の方々と話をしてみると、やはり現場担当の方々は大変多くの知
恵をお持ちなわけで、その方々を「教え育てる」ことは私のような
若輩者は言うまでもなく、人生のほとんどを現場で過ごされてきた
大先輩でもない限り無理なのだと思います。
かといって、それでは私のraison d'etreが消失してしまうので、
「何かできることはないのかな」と少し考えてみました。
まず、私のような人間ができることとしては、米国などで体系化さ
れた方法論について「紹介」することがあるでしょう。情報の「運
び屋」とでも言いましょうか。それだけでは人の言うことを聞きか
じるだけで創造的でもなく、何だか悲しいです。
じゃ、他に何かあるかな、と考えてみると、交渉や合意形成の進め
方について、方法論や実践理論(theory-in-use)を一緒に「見直す
(reflect)」こと、いわば「一緒に学ばせていただく」こともでき
るんじゃないかと思います。つまり、学校で先生が教鞭を取るスタ
イルではなく、講師が現場に入り、実務担当者の方々が何気なく日
常的に行っている合意形成のやり方を一緒に見直すというスタイル
を取ることではじめて、合意形成「教育」が可能になるのかな、な
んて思う今日このごろです。

(理事 松浦正浩〔在米国ボストン〕)
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