-社会の合意形成を支援する- NPO法人 『PI−Forum』
メールマガジン 第25号
(2004/9/16)
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★☆目次☆★
[ごあんない]
●PI−Forum誌 公募原稿募集中!
[インタビュー企画]
●『PI−Forumの会員ご紹介!シリーズ』
[イベント情報(報告)]
●PI−Forumイベントのご報告
[書籍・論文の紹介]
●論文の紹介
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■ごあんない
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●PI−Forum誌 公募原稿募集中!
PI-Forumでは、公共政策、公共事業、まちづくりなどの分野におけ
る社会的合意形成に関する研究、事例を実務家と研究者が幅広く
情報共有することを目的に、年2回、PI-Forum誌を発行することに
なりました。
2004年中に第1号「合意形成研究の多様性」の発行を予定して
います。発行後は、PI-Forumのウェブサイトで、いつでも無料で
閲覧いただけるようになります。
現在、第1号の発行に向けて、一般投稿原稿を募集しています。
第一次審査(原稿の概要のみ提出)は9月25日締め切りです。
既存の学術分野等にとらわれない、学際的で新規性の高い研究論文
や事例紹介・分析をお待ちしています。ふるってご応募ください。
詳細は以下のURLをご覧ください。
http://www.pi-forum.org/journal.html
(文責:松浦)
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■インタビュー企画
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● 『PI−Forumの会員ご紹介!シリーズ』
1)佐藤美奈子氏(株)オリエンタルコンサルタンツ
本号より、シリーズでPI−Forumの会員の方々を紹介して
いきます。第1回のインタビューは、発展途上国において主に道路
や灌漑施設・橋梁などの大型インフラ整備プロジェクトに対する
環境影響評価や社会経済調査をおこなっていらっしゃる佐藤美奈
子氏のご紹介です。佐藤氏には、開発コンサルタントとしての仕
事内容から、住民参加型の調査・研究・設計方法であるコミュニ
ティパーティシペーション誕生の歴史および緒外国での実践、日
本独自のPIに対する期待等、盛りだくさんでお話して頂きまし
た。(文責:今井)。
URL:http://www.pi-forum.org/membera1.html
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■イベント情報(報告)
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●『四国の社会資本整備に関する社会的合意形成の展開
〜米国のコンセンサス・ビルディングに学ぶもの〜』
□日時:平成16年8月26日(木) 13:00-16:30
□場所:香川厚生年金会館・ウェルシティ高松 1F
□主催:社団法人土木学会四国支部「土木技術者のための合意形
成技術の教育方法に関する調査委員会」、NPO法人PI-Forum
□プログラム:
講演1「社会資本整備における計画論理と合意形成技術者の
役割」
徳島大学工学部 教授 山中英生
講演2「社会資本整備におけるコンセンサス・ビルディング」
マサチューセッツ工科大学 博士課程 松浦正浩
パネルディスカッション
「日本におけるコンセンサス・ビルディングとは?」
徳島大学工学部 教授 山中英生
マサチューセッツ工科大学 博士課程 松浦正浩
香川大学工学部 教授 白木渡
高知工科大学工学部 教授 大谷英人
特定非営利法人コモンズ 副代表理事 澤田俊明
□所感:
講演会には、四国、中国、関西地域と東京を中心とした行政関係
者、建設系コンサルタント、大学教官、学生、NPO関係者など約
80名が参加し、米国におけるコンセンサス・ビルディング(CB)
について熱心に耳を傾けていた。CBの日本への適用可能性につ
いても議論がなされたが、「CBをそのまま導入するのではなく、
今まで日本で行なってきたことを見直し、日本の合意形成法を確
立して行けば良いのではないか。日本独自の部分とCBの良いと
ころをマッチングさせてはどうだろうか。」という松浦氏のコメ
ントが印象的であった。(文責:水谷)
●『コンセンサス・ビルディング手法研修会
社会資本整備における社会的合意形成 そのプロセスと技法』
□日時:8月26日(木)−28日(土)
□場所:香川厚生年金会館・ウェルシティ高松 2F
□主催:社団法人土木学会四国支部「土木技術者のための合意形
成技術の教育方法に関する調査委員会」、NPO法人PI-Forum
□プログラム:
◆8月26日(木)イントロダクション
自己紹介、課題カードの共有
講義1:コンセンサス・ビルディングの概要
◆8月27日(金)基本的枠組みの理解
寝覚めのアイスブレイク
質問への回答・補足
講義2:交渉学基礎/演習:二者間模擬交渉
講義3:紛争アセスメント
アイスブレイク的ふり返り
演習:紛争アセスメント
講義4(演習):メディエーション、第三者介入
講義5(演習):共同事実確認
講義6(演習):合意形成プロセスの企画設(その1)
クリニック〔オプション〕
◆7月28日(土)演習
発表:合意形成プロセス設計演習の中間発表
演習:合意形成シミュレーション
演習:合意形成プロセスの企画設計(その2)
発表:合意形成プロセスの企画設計のプレゼンテーション
全体のふり返り
□所感:
研修会には、四国地方と東京を中心とした行政関係者、建設系コ
ンサルタント、大学教官、学生、NPO関係者など20名(限定)が参
加した。プログラムは、3日間を通じ、アイスブレイク、講義、
シミュレーションなど盛りだくさんであり、交渉学の基礎から現
在の課題まで体系的に整理されたCBのエッセンスを体験型で理
解し身につけられるように練られていた。また、最後まで参加者
が一体となる場づくりが行なわれていたことが印象的であり、気
づき多き、学び多き研修になったと思われる。
これらの内容は、後日、PI-ForumのHPに掲載されるとともに、
土木学会四国支部の報告書としても公開される予定である。
(文責:水谷)
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■[書籍・論文の紹介]
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●論文紹介
"Community Participation in Development Projects
―― The World Bank Experience"
Samuel Paul( World Bank Discussion Papers 6, 1987年2月)
□概要
この報告書は、1970年代になされた世界銀行の都市住宅・衛
生・灌漑の三部門での開発援助におけるコミュニティ・パーテ
ィペーション(以下、CP)についてまとめたものである。まず、
CPを「受益者グループが、自分たちの収入・個人の成長・自立
・その他の福祉を高めるという視点で、開発事業の方向性と執
行とに影響を与える能動的なプロセス」と定義し、分析の枠組
みとして、CPの「目的」・「強度」・「実行役」を設定する。
「目的」として、政治的なエンパワーメント、(2)受益者の能力
開発、(3)事業の有効性を高める、(4)事業の効率性を高める、
(5)コストの分担という5つをあげる。「強度」としては、(1)
情報共有、(2)協議、(3)意思決定、(4)受益者が事業のイニシア
ティブをとるという4つの段階がCPにはあり、右に行くほど強度
が高くなっていく。CPの「実行役」としては、(1)事業者のフィ
ールドワーカー、(2)コミュニティのボランティア、(3)受益者
グループの3者をあげる(第1章)。
70年代の世界銀行の開発援助では、事業の公正さと貧困者間
の 利益分配手段としてのCPとが強調されていた。前述したCP
の目的に関しては、有効性の向上、効率性の向上、コストの分
担の3点に、エンパワーメントと能力開発よりも重点が置かれて
いた(第2章)。その点に関し、CPによるエンパワーメントと能力
開発は事業の持続可能性を高めると期待され、あまり実践され
ていないことが課題であると筆者は指摘する。一方、重点の置
かれていた3つの目標については、(3)・(4)有効性・効率性の向
上については、受益者のニーズを把握できるといった効果があ
ったが、課題もある、(5)コスト分担はほとんどの例で失敗し、
住民からの支持を得ることが課題、と分析する(上述の分析枠組
みに基づいて多角的にCPを分析しているが、紙面の都合上、目
的以外の分析については割愛した)。そして結論として、CPが適
切な手法となる文脈として、(1)エンパワーメントや能力開発を
目的とする場合、(2)受益者ニーズの把握に必要な場合、(3)事
業の性質上、事業者と受益者の対話が必要となる場合、(4)受益
者の事業管理能力が高い場合、という4つをあげる(第3・4章)。
最後に、以上からの教訓として、(1)能力開発やエンパワーメ
ントといった長期的な目的は事業の持続可能性を高めるので、
今後は重要になる、(2)CPを導入する前に、コミュニティの伝統
や受益者の特性など、CP導入の条件を分析する必要がある、(3)
CPの普及のために人材養成が重要であると指摘する(第5章)。
□所見
1987年に書かれた報告書であり、現在CPがどの様な状態にあ
るかを知ることはできないが、分析の枠組みと内容はかなり優
れていると思う。CPの目的については、事業の有効性や効率性
を高めるという短期的な視点だけでなく、事業の持続可能性を
考慮する長期的な視点が含まれていることが重要である。コス
ト分担によって受益者の当事者意識を高め、能力開発がなされ
れば援助が終わった後も 自分たちの力で貧困から抜け出して
いくことができるからである。援助が一時だけのもので終わっ
てしまわないようにするためには、長期的な視点は不可欠であ
る。また、あわせてCPの実行役を事業者に限定せずに、コミュ
ニティや受益者を含めていることも重要である。コミュニティ
や受益者自身がCPの実行役になっていくことは、能力開発と関
係している。
単に参加を取り入れればよいわけではなくCPを導入する条件
の分析が必要、参加をコーディネートする人材の養成が必要と
いった指摘も、現在に通用するものであろう。
開発援助では資金を出している関係上ドナーが優位になり、
ドナーの都合にあわせた援助になりがちであった。その反省か
ら、住民のニーズを把握しそれに適う援助をするための手段と
してCPが生まれてきた。そして、「ニーズを把握しそれに適う
事業を実施する」という、単純だが鋭い指摘があてはまるのは
開発援助だけではない。本号の佐藤会員のインタビューでも言
われていたことだが、日本が参加を考えるにあたって、開発援
助の現場での経験から学ぶことは多いと思われる(文責:学生
会員 飯島)。
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