第1回 デモクラシー・デザイン・ワークショップ
気候変動適応化シナリオプロセス検討
デモクラシー・デザイン・ワークショップは、複数の専門家が対話のデザインを議論するオープンな場です。第1回は、環境省環境研究総合推進費S-8「温暖化影響評価・適応政策に関する総合的研究」の一環で実施した、長野における気候変動適応化シナリオの検討プロセスについて、シナリオの検討プロセスにお詳しい先生方にアドバイスをいただきました。
実施日
2013年11月5日(火)午後7時~午後9時半
アドバイザー(五十音順)
昭和シェル石油株式会社 チーフエコノミスト 角和昌浩様
早稲田大学理工学部経営システム工学科 高橋真吾先生
公益財団法人未来工学研究所 田原敬一郎様
北海道大学高等教育推進機構 三上直之先生
アドバイジー
法政大学地域研究センター 馬場健司先生
長野県環境保全研究所 陸斉様、田中博春様
ファシリテーター
デモクラシー・デザイン・ラボ代表 松浦正浩(東京大学公共政策大学院)
案件の概要
・長野県須高地区の果樹農業に関する気候変動適応策
・須高地区は長野市に接し、アクセスよく、農業試験場も立地
・果樹についてはすでに影響も見え始めている
・シナリオワークショップによる参加型の検討が念頭
・2回程度開催予定
・2012年にステークホルダー会議を試行済
議論の結果
1)会議の名称
・シナリオワークショップと呼ぶ必要がなければ呼ばないほうがよい
・デンマークの事例と直接的に関係があるのかどうか
2)扱うイシュー
・ステークホルダー(参加者)にとって何が重要なイシューかが重要
・気候変動は彼らにとって重要なイシューでないのではないか?
・彼らの叫びから取り込んでいかなければならない
・ステークホルダーの理想が見えない状況で未来を描くことができない
・参加者自身のビジョンと関係ないのであれば響かない
・先に彼らのビジョンを描いて、その達成に係る不確実性を抽出したら?
・イシューの設定が専門家ドリブンになっている危惧がある
⇒気候変動を軸に農業の極端なすがたを描くことはできるはず
・須高地区の未来の幅の広さを示せればいいはず
⇒気候変動に縛られず、農業をどうするかという議論からはいる
⇒農政にとって作物転換は大きなイシューなのでそこを軸にする
⇒ステークホルダーの関心に沿って専門家がシナリオを描写すればよい
⇒昨年度のステークホルダー会議の成果を使って設定するのもよい
3)オーナー(クライアント)は誰か
・農政は技術開発中心で政策については審議会等に決めてもらうというスタンス
・「農業」と「農家」は別問題
・本来は農政がクライアントなのだが実質は環境部局
・セクショナリズムに一石を投じるような仕掛けが必要
・オーナーが明確でないとWSでの発言も八方美人になる
・農政をうまく巻き込むようにテーマ設定する必要がある
⇒「気候変動を考慮した須高の農業の可能性」など
4)専門家の設定
・気候モデルだけでなく社会経済モデルも提示する必要がある
・気候モデルと社会経済モデルの接続はいろいろな事例で困難に直面している
・社会経済モデルはステークホルダーの利害得失とリンクする
・議論が紛糾する要因でもある
a)気候変動の専門家について
・科学的な真実味、蓋然性についても検証が必要
・後で公表する際に対応が問題となりうるが、場の設計では大きな問題でない
・環境省系研究者のバックキャスティング思考はシナリオに合わない
⇒科学的な正統性調達の問題は前面にださない
⇒予測でなく可能性を検討することを念頭に置いてもらう
b)農政関係の専門家について
⇒不信感を受ける人は望ましくない
・主催者自身が選んで押し付けないという印象が重要
・コノミネーション手法も利用可能
(同じ利害関係の人、対立する利害関係だけど話ができる人を芋づる)
⇒農政の人が納得できることが重要
・「この先生が入っているんだ!」と農政が感じるような人
⇒長野の農業に詳しい者が条件
⇒地域の信頼と地元の知識を有すること
・〔知識の多様性←→参加者の信頼〕というトレードオフは腹をくくる必要あり
5)時間軸の設定
・農家は5~10年のことしか考えてないが気候変動の影響はずっと先の将来
・S8の予測は2050、2100で、途中は補間
⇒農家の「世代(交代)」や作物転換の時期で考えるとよい
・地域特有の時間軸で考える